福岡地方史研究会 会報(第14号) 巻頭言
※午前5時更新の原則を今日は実行できなかった。反省しきり。
※ 巻頭言を新しい号から古い号へと逆順で掲載します。
『福岡地方史談話会会報』第14号 1974年7月20日発行
【巻頭言】日本文化論の盛行に思うこと 川添昭二
昭和史論争以後、とくに最近〝日本文化論〟が盛んである。そこには「日本人の共同感覚」をとりもどそうとする志向がはっきりしている。一部の論者に、明治・大正期ナショナリズムを代表する東洋学者内藤湖南の日本文化論の意図的継承がみられることと無縁ではない。従って、マルキシズムとの対抗ないし克服の意図も明瞭である。
その論者に、日本史研究の専門家は、ほとんど見当たらない。東洋史・西洋史・哲学・社会学・文化人類学・政治学・心理学、さらには農学・精神医学その他各方面の研究者の活発な発言が目立つ。また、外人による、新鮮で発見性に富んだ――それだけに力点のおき方に或種の不均衡さはある――発言・指摘がなされている。
ために、或種のジレッタンティズムと教養主義的性格がみられ、比較文化論的傾向が強い。現在の日本文化を理解する今日的要求をふまえ、従って、明治以後の近・現代史を主な研究対象とする。この傾向、この成果を、地域史研究はどのようにうけとめていったらよいのだろうか。
意識・制度にかかわる擬制「中央」を粉砕し、「地域」個有の論理と思想を確立しようとするものにとって、究極の目標は、右と同様に「日本」把握にある。この両「日本」の吟味は、やはり自らの、ひとつひとつの史業のなかでおこなわれねばならないのであろう。
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